童話「クマのプーさん」の作者

UK A・A・ミルン
(Alan Alexander Milne)

赤い館の秘密
「赤い館の秘密」
(1921年)
(東京創元社)

 イギリスの作家。ロンドン郊外の町ギルバーンに生まれ大学を卒業後、劇作家・ユーモア作家として多くの小説や戯曲を発表しています。また童謡作家としても活躍し、とりわけ現在ディズニーの人気キャラクターの一つとしても有名な童話「クマのプーさん」(1926)の原作者として世界的に有名です。

 しかしミルン本人は推理小説も大好きだったらしく、ミステリーもわずかですが書いています。そのうちの一つが推理小説史上に残る名作となった長編「赤い館の秘密」です。そしてこの作品は同じく推理小説が好きだったというミルンの敬愛する父親に捧げられています。

 この作品には、次のような面白いエピソードも残されています。〈パンチ〉誌などでユーモア作家として活躍していたミルンが、ある時彼の事務の代理人に「推理小説を書いてみたい」と話したところ、代理人は面食らって「あなたに要求されているのはユーモア小説を書くことだ」と言われました。

 出版社や編集者も全く同じ意見だったらしいのですが、それにもかかわらずミルンはこの作品を書き上げ発表します。するとこれが大好評を得てしまったのです。

クマのプーさん
「クマのプーさん」
(1926年)
(岩波書店)

 それからしばらくして彼が今度は「童謡の本を書きたい」と言うと、代理人も出版社も口を揃えて「英国民が今もっとも読みたがっているのは推理小説だ」と言われたのでした。
 しかし結局ミルンはこれ以後長編ミステリの筆を執ることはありませんでした。ちなみにその後書かれた「クマのプーさん」などの童謡でミルンは世界的に有名となったというのも興味深い所です。

 なお長編は「赤い館の秘密」1作のみですが、短編はいくつか発表していて、彼が初めて原稿料を稼いだのもシャーロック・ホームズのパロディの短編だったそうです。

 また「赤い館」に登場する探偵役のギリンガムは金田一耕助のモデルにもなったといわれています。

 余談ですがミルンは背が高く、髪は薄めで鋭い目つきをしていて、ゴルフ好きなスポーツマンで、その外見からはとても童話作家には見えなかったといいます。


■作家ファイル■

出身地
イギリス、ロンドン西北部ギルバーンで生まれる
学歴
ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ卒
生没
1882年1月18日~1956年1月31日(74歳)
作家としての経歴
1904
ユーモア雑誌〈パンチ〉に投稿し、初めて詩が掲載される
その後1906年から14年まで、〈パンチ〉誌のアシスタント・エディターを務め、その合間をぬってエッセイ集を発表
1905
最初の刊行本のスケッチ集「Lovers in London」を出版
1910
〈パンチ〉誌掲載のエッセイを集めた「The Day's Play(その日の遊び)」を出版(ミルンが初刊行作品と位置付けている作品)し、尊敬するピーターパンの作者としても有名なジェームズ・バリに送って讃辞を受ける(なおミルンの戯曲はバリの影響が色濃く反映されていると言われている)
1917
処女戯曲の「Wurzel-Flummery(ワーゼル・フラマリー)」がロンドンで初上演される。以後戯曲を中心に活動
1920
戯曲「ピム氏が通る」が上演されて大成功を収める(翌年映画化)
8月21日に息子のクリストファー・ロビン誕生
1921
敬愛する父親に捧げるために書いたミステリー長編「赤い館の秘密」を出版
1924
息子クリストファーをモデルにした子供向けの童謡詩集「クリストファー・ロビンのうた」を出版
1926
息子クリストファー・ロビンと息子の持つ縫いぐるみをモチーフに童話「クマのプーさん」を出版(挿絵アーネスト・ハワード・シェパード)
1929
ケネス・グレアムの童話「たのしい川べ」を戯曲化した「ヒキガエル館のヒキガエル」が上演され大成功を収める(以後毎年クリスマスシーズンの恒例行事として上演されるようになる)
1932
戯曲「パーフェクト・アリバイ」を収録の「Four Plays」を出版
1951
最後の戯曲「Before the Flood(洪水の前)」が上演される
1966
ディズニーアニメ映画として「プーさんとはちみつ」が公開される
シリーズ探偵
アントニー・ギリンガム (Anthony Gillingham)
代表作
「赤い館の秘密」
「クマのプーさん」「プー横丁にたった家」

■関連リンク■

1 ディズニー「Winnie-The-Pooh」公式サイト


■著作リスト■

1 アントニー・ギリンガム登場作品リスト

2 クマのプーさんシリーズ作品リスト

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 クマのプーさん 1926 岩波少年文庫008('00)
岩波書店(80周年記念版)('06)
岩波書店 岩波の愛蔵版2「クマのプーさん プー横丁にたった家」('98)
竹書房文庫 ディズニー・クラシックス6('03)
岩波書店 岩波世界児童文学全集2('93)
岩波少年文庫1011(改版)('85)
岩波書店「クマのプーさん・プー横丁にたった家」('62)
岩波少年文庫124('56)
英宝社('50)
絵・E・H・シェパード
2 プー横丁にたった家
(プー横丁)
1928 岩波少年文庫009('00)
岩波書店 岩波の愛蔵版2「クマのプーさん プー横丁にたった家」('98)
岩波少年文庫1012(改版)('85)
岩波書店「クマのプーさん・プー横丁にたった家」('62)
岩波少年文庫174('58)
英宝社('50)
岩波書店('42)
絵・E・H・シェパード

【詩集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 When We Were Very Young
クリストファー・ロビンのうた
(ちいさなちいさなときのこと)
(幼き日のこと)
1924 晶文社('79)
中部日本教育文化会 A.A.ミルン童謡集('81)
富山房('40)
絵・E・H・シェパード
2 クマのプーさんとぼく
(六つになったよ)
1927 晶文社('79)
中部日本教育文化会 A.A.ミルン童謡集('81)
1の続編
絵・E・H・シェパード

【オムニバス】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Winnie-the-Pooh:The Complete Collection of Stories and Poems
クマのプーさん全集─お話と詩─
1994 岩波書店('97) クマのプーさんの短編集2冊と詩集2冊を収録した完全版

【絵本】

「クマのプーさん」「プー横丁にたった家」を分割して絵本にしたもの(すべて絵・E・H・シェパード)

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 プーのはちみつとり 1954 岩波書店 クマのプーさんえほん1('82)
2 プー あなにつまる・ふしぎなあしあと 岩波書店 クマのプーさんえほん2('82)
3 プーのゾゾがり 岩波書店 クマのプーさんえほん3('82)
4 イーヨーのたんじょうび 岩波書店 クマのプーさんえほん4('82)
5 カンガとルー 森にくる 岩波書店 クマのプーさんえほん5('82)
6 プーのほっきょくたんけん 岩波書店 クマのプーさんえほん6('82)
7 コブタと大こうずい 岩波書店 クマのプーさんえほん7('82)
8 プーのたのしいパーティー 岩波書店 クマのプーさんえほん8('82)
9 イーヨーのあたらしいうち 1956 岩波書店 クマのプーさんえほん9('82)
10 トラーのあさごはん 岩波書店 クマのプーさんえほん10('82)
11 トラー 木にのぼる 1954 岩波書店 クマのプーさんえほん11('83)
12 プー あそびをはつめいする 岩波書店 クマのプーさんえほん12('83)
13 ウサギ まいごになる 岩波書店 クマのプーさんえほん13('83)
14 コブタのおてがら 岩波書店 クマのプーさんえほん14('83)
15 フクロのひっこし 岩波書店 クマのプーさんえほん15('83)

【絵本(セット)】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 クマのプーさん えほん
  第1集/5冊
1982 岩波書店 絵本1~5のセット
絵・E・H・シェパード
2 クマのプーさん えほん
  第2集/5冊
岩波書店 絵本6~10のセット
絵・E・H・シェパード
2 クマのプーさん えほん
  第3集/5冊
1983 岩波書店 絵本11~15のセット
絵・E・H・シェパード

【短編映画】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 プーさんとはちみつ 1966 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント「くまのプーさん 完全保存版」('02)
2 プーさんと大あらし 1968 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント「くまのプーさん 完全保存版」('02) 第41回アカデミー賞短編アニメ賞
3 プーさんとティガー 1974 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント「くまのプーさん 完全保存版」('02)
4 Winnie the Pooh and a Day for Eeyore
プーさんとイーヨーの一日
1983

【長編映画】

すべてウォルトディズニーの製作

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 くまのプーさん 完全保存版 1977 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント「くまのプーさん 完全保存版」('02) 「プーさんとはちみつ」「プーさんと大あらし」「プーさんとティガー」の三作品で構成
2 くまのプーさん
 クリストファー・ロビンを探せ!
1997 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('99)
3 くまのプーさん
 冬の贈りもの
1999 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('04) 「春よ来い?」「みんなの感謝祭」「さよなら、ケシー 」の三作品
4 ティガー・ムービー
/プーさんの贈りもの
2000 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('01)
5 くまのプーさん
 みんなのクリスマス
2002 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('02) 「プーさんのメリークリスマス」「ハッピー・プー・イヤー」の2本
6 くまのプーさん 完全保存版 II
 ピグレット・ムービー
2003 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('04)
7 くまのプーさん
 ルーの楽しい春の日
2004 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('04)
8 くまのプーさん ザ・ムービー
/はじめまして、ランピー!
2005 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('05)
9 くまのプーさん
 ランピーとぶるぶるオバケ
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント('05)

【関連書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Winnie the Pooh's Teatime Cookbook
クマのプーさんティータイムブック
1993 BL出版('99) A・A・ミルン原案
絵・E・H・シェパード
2 Pooh's Little Etiquette Book & Pooh's Little Instruction Book
クマのプーさんエチケット・ブック
1995 ちくま文庫('12)
筑摩書房 プーさんからのおくりもの/上('99)
A・A・ミルン原案
メリッサ・ドーフマン・フランス&ジョーン・パワーズ編著
絵・E・H・シェパード
3 Pooh's Little Fitness Book & Eeyore's Gloomy Little Instruction Book
クマのプーさんフィットネス・ブック
1996 筑摩書房 プーさんからのおくりもの/下('99) A・A・ミルン原案
メリッサ・ドーフマン・フランス&ジョーン・パワーズ編著
絵・E・H・シェパード
4 Winnie-the-Pooh's Cookie Cookbook
クマのプーさんクッキーブック
BL出版('03) A・A・ミルン原案
絵・E・H・シェパード
5 Winnie-the-Pooh's Picnic Cookbook
クマのプーさんピクニックブック
1997 BL出版('04) A・A・ミルン原案
絵・E・H・シェパード
6 Winnie-the-Pooh's Little Book of Wisdom
クマのプーさんの知恵
1999 PHP研究所('02) 絵・E・H・シェパード

3 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ユーラリア国騒動記
(昔あるとき)
1917 早川文庫 FT15('80)
北星堂書店('95)
第一次大戦に参戦していた英国兵士を楽しませようと書いたファンタジー
2 Two People 1931 -
3 四日間の不思議 1933 原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ('04)
4 Chloe Marr 1946 -

【戯曲】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Wurzel-Flummery
(ワーゼル・フラマリー)
1917 -
2 Belinda 1918 -
3 The Boy Comes Home -
4 Make-Believe -
5 The Camberley Triangle 1919 -
6 Mr. Pim Passes By
(ピム氏が通る)
-
7 The Red Feathers 1920 -
8 The Romantic Age -
9 The Stepmother -
10 The Truth about Blayds -
11 The Dover Road 1921 -
12 The Lucky One 1922 -
13 The Artist: a duologue 1923 -
14 Give Me Yesterday -
15 The Great Broxopp -
16 Ariadne 1924 -
17 The Man in the Bowler Hat -
18 To Have the Honour -
19 Portrait of a Gentleman in Slippers 1926 -
20 Success -
21 Miss Marlow at Play 1927 -
22 パーフェクト・アリバイ 1928 論創社 論創海外ミステリ70('07) 探偵劇
23 The Ivory Door 1929 -
24 Toad of Toad Hall
ヒキガエル館のヒキガエル
 K・グレアム作「風そよぐ柳の岸辺」の戯曲化
北星堂書店('93) ケネス・グレアムの童話「たのしい川べ」の戯曲化
25 Michael and Mary 1930 -
26 Other People's Lives
(They Don't Mean Any Harm)
1933 -
27 Miss Elizabeth Bennett 1936 -
28 Sarah Simple 1937 -
29 Gentleman Unknown 1938 -
30 The General Takes Off His Helmet 1939 -
31 The Ugly Duckling 1946 -
32 Before the Flood
(洪水の前)
1951 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Lovers in London 1905 - スケッチ集、ミルンの事実上の最初の発表作品
2 Birthday Party and Other Stories 1948 -
1 Birthday Party -
2 Anne-Marie -
3 The General Takes Off His Helmet -
4 Luck Nothing -
5 Breitenstein -
6 Tristram -
7 C. O. D. -
8 Dear Old George -
9 In Vino Veritas
昔、ある殺人者が……
1946 河出文庫「美酒ミステリー傑作選」('90)
大和書房「冷えたギムレットのように」('83)
HMM'81.12
10 A.V. and R.V. -
11 Night at the Aldwinckles -
12 I Don't Like Blackmailers
(A Perfectly Ordinary Case of Blackmail)
脅迫事件はおまかせ
HMM'86.10  
13 Spring Song -
14 The Shakespearean Teory -
15 The Secret -
3 A Table Near the Band and Other Stories 1950 -
1 A Table Near the Band -
2 The Prettiest Girl in the Room -
3 A Man Greatly Loved
誰からも愛された人
HMM'88.2
4 The Rise and Fall of Mortimer Scrivens -
5 Christmas Party -
6 The Three Dreams of Mr. Findlater
三つの夢
HMM'99.9
7 The River -
8 十一時の殺人 論創社 論創海外ミステリ70「パーフェクト・アリバイ」('07)
HMM'95.4
9 A Rattling Good Yarn -
10 Portrait of Lydia
ずっと昔のこと
HMM'04.6
11 The Wibberley Touch -
12 Before the Flood -
13 The Balcony -

【その他の邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 シャーロックの強奪
(シャーロックの危難)
1903 論創社 論創海外ミステリ61「シャーロック・ホームズの栄冠」('07)
HMM'75.10
シャーロック・ホームズのパロディ
2 ワトスン先生大いに語る 1928 河出文庫「シャーロック・ホームズ17の愉しみ」('88)
講談社('80)
シャーロック・ホームズのパロディ
3 ほぼ完璧 1950 論創社 論創海外ミステリ70「パーフェクト・アリバイ」('07)
4 お化屋敷 トリック'53.2
5 A Hint for Next Christmas
クリスマス・プレゼント対策法
HMM'93.12 エッセイ

【児童書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 こどもの情景 1925 パピルス('96)
1 王女さまとりんごの木
2 すずめの木広場
3 ふたご
4 ベッドのなかの、ちっちゃなウォータロー
5 砂のこどもたち
6 かわいそうなアン
7 インドへの旅
8 バーバラの誕生日に
9 小さな銀のカップ
10 魔法の丘
11 ムッシュー・デュポンの三人姉妹
12 海べのお城
2 うさぎ王子 1966 篠崎書林('86)
1 うさぎ王子
(ウサギの王子)
1924 講談社文庫 イギリスファンタジー童話傑作選「銀色の時」('86)
2 わらわない王女 1925

【ノンフィクション】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 When I Was Very Young 1930 - 絵・E・H・シェパード
2 Peace with Honour 1934 -
3 War with Honour 1940 -
4 Year In, Year Out 1952 - 絵・E・H・シェパード

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Day's Play 1910 - 〈パンチ〉誌掲載のエッセイ集
ミルンの最初の作品とされる
2 The Holiday Round 1912 - 〈パンチ〉誌掲載のエッセイ集
3 Once a Week 1914 - 〈パンチ〉誌掲載のエッセイ集
4 Not That It Matters 1920 - エッセイ集
5 The Sunny Side 1921 - 〈パンチ〉誌掲載のエッセイ集
6 Those Were the Days 1929 - 上記1~3と5の4冊からのセレクション
7 By Way of Introduction -

【詩集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Behind the Lines 1940 -
2 The Norman Church 1948 -

【自伝】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 今からでは遅すぎる
(ぼくたちは幸福だった)
1939 岩波書店('03)
研究社('75)
自伝

【関連書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 クマのプーさんと魔法の森
(クマのプーさんと魔法の森へ)
1974 岩波書店('79)
求龍堂グラフィックス('93)
ミルンの息子、クリストファー・ロビン・ミルンの自伝
2 クリストファー・ロビンの本屋 1979 晶文社('83) ミルンの息子、クリストファー・ロビン・ミルンの自伝

【参考】「赤い館の秘密」(東京創元社 創元推理文庫)
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