出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
439 |
蘭とビールをこよなく愛する美食家の安楽椅子探偵ネロ・ウルフは、その三週間の間に八つの事件依頼を断り続けていた。銀行預金が安定していて、事件がウルフのお気に召さなかったまでの話だ。だが、九つめの事件の依頼者は、いささか風変わりだった。おなじみの助手アーチー・グッドウィンが応対に出ると、依頼者の女は、不思議な発音の言葉を使う。よく考えてみるとモンテネグロ語らしいのだ。モンテネグロといえば、ウルフの生まれ故郷ではないか。さすがのウルフも、懐かしがって事件を引き受ける気になるだろうと思ったアーチーは女を通したが─ウルフは、血相を変えて椅子からはねあがると、部屋から飛び出していってしまった。二トンもある巨大な図体がだ! だが、女はこりもせず、彼女の友人ネヤ・トルミッチがネロ・ウルフの娘であることを証明する書類をたずさえて、再びやって来た……。
ダイヤモンド強盗の嫌疑をかけられた、モンテネグロ人の”娘”の無実を晴らすべく立ち上がったウルフは、やがて、事件の背後に国際的陰謀を嗅ぎあてた。時は第二次世界大戦直前。バルカンに迫るナチの手に、ウルフの反全体主義闘志は湧いた!
ネロ・ウルフ自身の口から、断片的にではあるが、彼の前半生が語られる本書は、物語の構成も事件も派手で、シリーズ中でも異色の作品として知られている。 |