ハードボイルドの始祖

USA ダシール・ハメット
(Dashiell Hammett)

赤い収穫
「赤い収穫」
(1929年)
(早川書房)

 アメリカの推理小説家で、ハードボイルドの始祖と目される人物。またフィリップ・マーロウもののレイモンド・チャンドラー、リュウ・アーチャーもののロス・マクドナルドとともにハードボイルド作家の〈御三家〉と評されています。

 メリーランド州に生まれますが、生れた家が貧しかったためわずか13歳で働き始め、やがて1915年、20歳の時にピンカートン探偵社に入り私立探偵として活躍するようになります。そしてこの当時ハメットの上司だった人物が、後の探偵コンチネンタル・オプのモデルとなったのだといいます。

 しかしほどなく激務のために体調を崩し探偵の仕事を辞めざるを得なくなりますが、その療養中に入院先の病院で看護婦ジョセフィン・アナス・ドーランと知り合い結婚。 更に静養の傍ら以前探偵として活躍した際の知識と職務経験を活かして推理小説を書き始め、1922年に短編「帰路」がパルプ・マガジン〈ブラック・マスク〉誌に掲載され作家デビューを果たします。

その後は生活苦もあって宝石店の宣伝部長などを勤めましたがあまり成功せず、再び体調を崩してしまい、療養の傍ら再び小説の筆を執ります。

 そうして発表されたのが、1927年から28年にかけて〈ブラック・マスク〉誌に連載された長編「血の収穫」でした。

 この「血の収穫」が大反響を呼びようやく作家としての地位を確立しますが、更にその名声を決定づけたのが1929年から30年にかけて〈ブラック・マスク〉誌に連載された、私立探偵サム・スペードの活躍する長編「マルタの鷹」です。

 この作品は名優ハンフリー・ボガード主演で映画化もされていて、ハードボイルド小説の古典的名作として今日でも数多くのファンに愛読され続けています。

 その後第5長編「影なき男」の発表を最後にスランプに陥ったのか、一切作品を発表しなくなってしまいますが、そんな中ハメットは共産主義と深く関わり合うようになります。

 そして第二次世界大戦から戦後の冷戦構造下のアメリカにおいては、いわゆる〈赤狩り〉の犠牲になり投獄されたこともあったそうですが、今日ではその名誉も回復されているそうです。

マルタの鷹
「マルタの鷹」
(1930年)
(早川書房)

■作家ファイル■

出身地
アメリカ、メリーランド州セントメアリーズ
学歴
ボルティモア工業専門学校中退
生没
1894年5月27日〜1961年1月10日(66歳)
作家としての経歴
1922
〈ブラック・マスク〉誌に処女短編「帰路」が掲載される
1923
短編「放火罪および…」を発表。その後探偵オプを主人公とする短編を送り出す
1927
〈ブラック・マスク〉誌にて最初の長編「赤い収穫」を発表し、大反響を呼ぶ
以後「デイン家の呪」「マルタの鷹」「ガラスの鍵」と次々と傑作を発表し、映画化もされる
1934
長編「影なき男」を最後に小説を書かなくなる
シリーズ探偵
探偵コンチネンタル・オプ (The Continental Op)
私立探偵サム・スペード (Samuel Spade)
代表作
「マルタの鷹」(スペード)
「赤い収穫」(オプ)
「影なき男」
ランキング
EQアンケート11位
ハヤカワベスト100・10位

■著作リスト■

1 コンチネンタル・オプ登場作品リスト

2 サム・スペード登場作品リスト

3 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
ガラスの鍵 1931 早川文庫143-4
HPB169
創元文庫130-3
ハヤカワベスト100・85位
EQアンケート86位
影なき男 1934 早川文庫143-3
HPB109
雄鶏社 雄鶏みすてりーず6('50)
最後の作品

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
The Adventures of Sam Spade and Other Stories
(サム・スペードの冒険)
1944 創元文庫130-5「スペイドという男」(抄訳) エラリー・クイーン編
スペード3編含む全7編
クイーンの定員98
Hammett Homicides 1946 - エラリー・クイーン編
オプ4編他全6編
1 両雄並び立たず
(二本のするどいナイフ)
(二つのナイフ)
1934 講談社文庫「死刑は一回でたくさん」('79)
EQMM'57.1
新青年'34.11
2 Ruffian's Wife
ならず者の妻
1925 河出文庫「ブラッド・マネー」('88)
HMM'84.7
Dead Yellow Women 1947 - エラリー・クイーン編
オプ4編他全6編
1 The Green Elephant
緑色の悪夢
1923 HMM'94.7
2 The Hair One
毛深い男
1925 河出文庫「ブラッド・マネー」('88)
HMM'72.12
悪夢の街 1948 HPB642 エラリー・クイーン編
オプ2編他全4編
1 悪夢の街 1924 HPB642「悪夢の街」
2 アルバート・パスターの帰郷
(アルバート・パスター帰る)
1933 河出文庫「ブラッド・マネー」('88)
HPB642「悪夢の街」
The Creeping Siamese 1950 - エラリー・クイーン編
オプ3編他全6編
1 ダン・オダムズを殺した男 1924 創元文庫130-5「スペイドという男」
講談社文庫「死刑は一回でたくさん」('79)
EQMM'65.9
2 ケイタラー氏の打たれた釘 1926 別冊宝石87('59)
3 The Joke on Eloise Morey 1923 -
Woman in the Dark 1950 - エラリー・クイーン編
オプ3編他7編
1 闇の中から来た女
(暗闇から来た女)
1933 集英社「闇の中から来た女」('91)
別冊宝石79('58)
新青年'34夏季増刊
2 Afraid of a Gun 1924 -
3 休日 1923 創元文庫130-5「スペイドという男」
マンハント'62.9
4 The Man WHo Stood in the Way
厄介な男
1923 HMM'76.8
A Man Named Thin and Other Stories 1962 - エラリー・クイーン編
オプ1編他8編
1 A Man Named Thin
不調和のイメージ
1961 EQMM'61.7
2 Wages of Crime
犯罪の値
1923 ヒッチコックマガジン'63.1
3 The Barber and His Wife
理髪店の主人とその妻
1922 HMM'05.6
4 Itchy, the Debonair
紳士強盗イッチイ
1924 EQMM'59.10
5 The Second-Story Angel
深夜の天使
1923 ヒッチコックマガジン'63.2
6 In the Morgue
死体置場
EQMM'59.11
7 When Luck's Running Good -
The Big Knockover 1966 - オプ9編他
全10編
1 Tulip - 未完成

【日本で独自編纂の短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
スペイドという男 1976 創元文庫130-5 スペード3編、オプ2編他
全10編
死刑は一回でたくさん 1979 講談社文庫 スペード2編、オプ4編他
全8編
ブラッド・マネー 1988 河出文庫 7編

【その他の邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
The Parthian Shot
最後の一矢
1922 HMM'05.6
The Road Home
帰路
河出文庫「ブラッド・マネー」('88)
国書刊行会「ブラック・マスクの英雄たち I」('86)
HMM'77.5
ハメットの処女短編
Hard Boiled
ついている時には
1923 EQMM'60.4
怪傑白頭巾 河出文庫「ブラッド・マネー」('88)
EQ'82.1(25)
ダイヤモンドの賭け 1929 EQ'95.7(106) サミュエル・ダシール名義
怪盗小説
恐ろしき計画 新青年'32夏期増刊 原題不明
緑色のネクタイ 新青年'35春期増刊
黒い羊 新青年'37新春増刊

【その他の作品】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
闇の中から来た女 1933 集英社('91)
別冊宝石79('58)
新青年'34夏季増刊
1988年にロバート・B・パーカーの序文付きでハードカバーで刊行された中編

【映画脚本】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
City Streets 1931 -
Mister Dynamite 1935 -
After the Thin Man
続・影なき男
1936 HMM'87.4-5
Another Thin Man 1939 -
Watch on the Rhine 1943 -

【オムニバス】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Dashiell Hammett Omnibus 1935 -
The Dashiell Hammett Omnibus 1950 -
The Novels of Dashiell Hammett 1965 -

【編書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Creeps By Night
(英 Modern Tales of Horror)
(米改 The Red Brain)
(英改 Break Down)
1931 - 1961年改版

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
怪奇小説の条件 HMM'67.8 エッセイ
『ベンスン殺人事件』について 原書房「名探偵の世紀」('99)

【研究書】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
ダシール・ハメットの生涯 1983 早川書房('87) ダイアン・ジョンスン著
ダシール・ハメット伝 晶文社('88) ウィリアム・F・ノーラン著

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