出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
509 |
修道院の教会堂の通路を、青黒いギロチンの刃のように、ななめに二つに切っている影の中に、彼女は出番を待っていた。いまニューヨークでも名も高い、死の舞踏の踊り手マリーだった。その踊りは誰にも出来なかった。誰もが神の祟りを恐れて、踊りたがらないのだ。マリーは九つのときから仕込まれて十年、十九の今もそれを踊り続けているのだ。そして、サクソフォン吹きのマクシー・ジョンズは、インドの死の女神カリーに捧げる舞踏を見たとき、素晴しい計画を思いついたのだ。「カリーの踊り」をパリやロンドンに持っていったら、絶対にうけるに違いない……美しい、エキゾチックな混血娘が踊る、神々しく官能的な死の舞踏─そうだ、それに、ダンスをしている間に死人が出るという噂を広めることができたら……!
マクシーはそのために、死人役の男さえ雇った。その結果は、予想通り、大いに人気を博したのだが─最後の拍手を送った時、ひとりだけ立ち上がらない男がいた。男は本当に死んでいたのだ!
死の舞踏が導く数奇な運命─恐怖とサスペンスの名手コーネル・ウールリッチの傑作長編! |