出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
563 |
11月だというのに、マディスン・シティは暑さにうだっていた。冬の雨が遅れていて、砂漠の風が、乾ききった暑さを街に運んでくるのだ。地方検事ダグラス・セルビイのオフィスの湿度計はゼロを示していた。しかし、突然、そうした暑さを吹きとばすように、電話のベルがけたたましく鳴った。そして、受話器をとったセルビイの耳に、うわずった女の声が速射砲のように、とびこんできたのだ。アリス・グローリーと名のるその女は、赤ん坊を連れて停留所でバスを待っていたところ、見知らぬ男が寄ってきて、駐めてあった一台の車に無理矢理、彼女を押しこもうとした。女はその男の手を逃れると、地方検事に電話をかけたのだった。しかし、……その電話も、まだ話が終らぬうち、男の荒々しい声とともに、ふつりと途絶えてしまった。─セルビイはすぐさま、バスの停留所に急行した。だが、そこには女の姿はなく、赤ん坊しかいなかった。そして、置き忘れたらしいハンドバッグの中には、急死した男の妻であることを証明する書類が入っていた。その男、エズラ・グローリーは莫大な遺産を持っていた。……誘拐と遺産相続にからむ殺人事件! ガードナー三大シリーズの一つ! |