出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
401 |
バーサとドナルドの探偵事務所を訪れ、作家のアンセルと名乗った男の依頼は、飛び切り風変りなものだった。姓はわからないが、カールという名で、六年前パリへ新婚旅行に行った男の現在の居場所突き止めて欲しい、というのだ。その男を素材にして小説を書くというアンセルの言葉は、額面どおりには受け取りがたかったが、とにかくドナルドの旺盛な好奇心を掻き立てずにはおかない依頼であるのは間違いないところ。さっそく、六年前の新聞をあっさり返し、結婚欄を探し始めたが、案に違ってあっさり問題の男は見つかった。名はカール・エンディコット。油井や果樹園を所有する少壮実業家で、自分の秘書エリザベスと結婚していた。 だが、話には続きがあった。カールは新婚旅行から帰って間もなく何者かに殺害されていたのだ。犯人は捕まっておらず、その首には多額の賞金がかかっていた。しかも、殺人の最有力容疑者の人相は、背の高い、黒い髪と、黒い目、芸術家のような長い指をした男─それは、依頼人アンセルその人だった! ドナルドは六年前の殺人事件をもう一度掘り返しにかかったが……。 |