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時代の最先端を行く、推理小説界の〈クセ者〉

UK アントニイ・バークリー
(Anthony Berkeley Cox)
〔別名 フランシス・アイルズ (Fracis Iles)〕

毒入りチョコレート事件
「毒入りチョコレート事件」
(1929年)
(東京創元社)
 イギリスの小説家で本格黄金時代を代表する作家の一人。 従来の推理小説に対する批判を織り交ぜながらも、推理小説の真の面白さを追求するために様々な試行錯誤を繰り返した異色の作家です。

 経歴の方は盲人探偵マックス・カラドスの生みの親アーネスト・ブラマ同様、バークリー自身あまり語りたがらなかったそうで詳しい経歴は分かっていないようですが、ロンドンで大学に通い、第一次世界大戦の際にはフランス戦線に参加し負傷経験があること、このことが彼の生み出した探偵ロジャー・シェリンガムに投影されていることぐらいです。

 彼の作品はバークリー名義だけでなく、フランシス・アイルズ、A・B・コックス、モンマス・プラッツなどの数多くの名義を用いて発表されています。

 彼の作風は元々ユーモア雑誌〈パンチ〉に小説を寄稿してユーモア作家として活躍していたこともあって、独特の皮肉・批評精神とそれに裏打ちされたユーモア精神に溢れています。

 また本格推理の分野だけでなく、「殺意」などの代表作があるフランシス・アイルズ名義では犯罪者を主人公に据え、その犯罪の過程や犯行後の追いつめられていく心理をリアルに描き出す、いわゆる〈犯罪心理小説〉の分野でも新境地を拓いたり、ドロシー・L・セイヤーズらとともに推理小説作家の親睦団体としての〈ディテクション・クラブ〉設立の中心的役割を担ったりと、常に時代の先を行く先駆者としての役割を果たしました。

 近年、「第二の銃声」が国書刊行会の世界探偵小説全集の一冊として新訳されたのを皮切りに、この世界探偵小説全集と晶文社ミステリー・シリーズなどを中心として長編が次々と邦訳されていますが、残りの作品も邦訳されるのが待ち遠しく思えます。
殺意
「殺意」
(1931年)
(東京創元社)

■作家ファイル■

出身地 イギリス、ハートフォードシャー州ワトフォード
アイルズは母方の姓
学歴 オックスフォード大学ユニヴァーシティ・カレッジ卒
生没 1893年7月5日〜1971年3月9日
作家としての経歴
1925 ”?”名義で、ミステリ長編第一作でロジャー・シェリンガム初登場の「レイトン・コートの謎」を発表
1928 ミステリ作家の親睦団体である〈ディテクション・クラブ〉を設立。「漂う提督」などの連作長編を発表
1931 フランシス・アイルズ名義で犯罪小説として、倒叙ミステリの傑作としても名高い長編「殺意」を発表
1932 アイルズ名義「レディに捧げる殺人物語」を発表。この作品は1941年アルフレッド・ヒッチコック監督により「断崖」のタイトルで映画化される
シリーズ探偵 ロジャー・シェリンガム (Roger Sheringham)
アンブローズ・チタウィック (Ambrose Chitterwick)
代表作 【ロジャー・シェリンガム】
「毒入りチョコレート事件」(チタウィックも共演)
「第二の銃声」「ジャンピング・ジェニイ」

【アンブローズ・チタウィック】
「試行錯誤」

【フランシス・アイルズ名義】
「殺意」「レディに捧げる殺人物語」
ランキング EQアンケート9位

■著作リスト■

1 ロジャー・シェリンガム登場作品リスト

2 アンブローズ・チタウィック登場作品リスト

3 フランシス・アイルズ名義の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
殺意 1931 創元文庫124-1
角川文庫
東都書房 世界推理小説大系18('62)
東京創元社 世界推理小説全集20('56)
日本出版協同 異色探偵小説選集3('53)
倒叙三大名作の一つ
乱歩の1935年以降の長編ベスト10・1位
レディに捧げる殺人物語
(犯行以前)
(断崖)
(リナの肖像)
1932 創元文庫124-2
HPB112
三笠書房(新装版)('78)
三笠書房('76)
アルフレッド・ヒッチコック監督「断崖」のタイトルで映画化
被告の女性に関しては 1939 晶文社 晶文社ミステリ('02)  

【短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Excerpt 1932 -  
Outside the Law
無法地帯
1934 別冊クイーンズマガジン'59秋  
暗い旅路
(暗い旅立ち)
1935 早川書房「復刻エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン No.1-3」('95)
朝日ソノラマ文庫「13人の鬼あそび」('85)
EQMM'56.9
 
It Takes Two to Make a Hero 1943 -  
The Coward
臆病者
1953 HMM86.3  

4 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
The Family Witch 1926 - A・B・コックス名義
ユーモア・ファンタジー
The Professor on Paws - A・B・コックス名義
ユーモアSF
プリーストリー氏の問題 1927 晶文社 晶文社ミステリ('04) A・B・コックス名義
シシリーは消えた 原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ('05) A・モンマス・プラッツ名義
邦訳はバークリー名義
Not to Be Taken
(米 A Puzzule in Poison)
1938 -  
Death in the House 1939 -  

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Brenda Entertains 1925 - A・B・コックス名義
最初期のユーモア短編集

【リレー長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
屏風のかげに 1930 中央公論社「ザ・スクープ」('83)   
漂う提督 1931 早川文庫73-1
HMM'80.7-9
 
ザ・スクープ 1933 中央公論社('83)  
警察官に聞け 早川文庫99-1
HMM'84.1-6
シェリンガムも登場

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
ボー・ピープのヒツジ失踪事件 1923 論創社 論創海外ミステリ61「シャーロック・ホームズの栄冠」('07) シャーロック・ホームズのパロディ
文体の問題、あるいはホームズとモダンガール 1925 文藝春秋 P・G・ウッドハウス選集2「エムズワース卿の受難録」('05) A・B・コックス名義、エッセイ1に所収のウッドハウスの文体によるホームズ・パロディ
ホームズと翔んでる女 早川文庫2-38「シャーロック・ホームズの災難/上」('84)  
Mr. Simpson Goes to the Dogs
帽子の女
1934 EQMM'57.9  
The Policeman Only Taps Once
警官は一度だけ肩を叩く
1936 HMM'83.6  
Right to Kill
殺しの権利
  EQ'97.9  
The Sweet of Triumph
成功の菓子
   
My Detective Story
発端
  新青年'38夏季増刊(抄訳) A・B・コックス名義

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
Jugged Journalism 1925 - A・B・コックス名義
ユーモア・エッセイ集
探偵問答 1930 創元推理15('96冬) ドロシー・L・セイヤーズとのラジオ対談
電気ぶろのプロット  
The Author's Crowning Hour
作家その栄光の時
  HMM'82.3 A・B・コックス名義
エッセイ
A Story Against Reviewers
書評家連中
 

【参考】「ピカデリーの殺人」(東京創元社 創元推理文庫)
「ジャンピング・ジェニイ」(国書刊行会 世界探偵小説全集)
「EQ95年11月号」(光文社)
 


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