出版 |
早川書房
ハヤカワポケットミステリ
497 |
暗澹たる空模様のある朝、若いハリイ・ゴスリングは死刑執行人に手足を縛られながら、自分の死体埋葬に関する指示に耳を傾けていた。薄暗い刑場の光を受けたハリイは頭巾をかぶせられ、絞首台への階段を引きたてられるように一歩一歩登って行った─絞首索が首に巻きつけられ、ぐっと床が落ち、あたりが闇に包まれる……。だが、この死刑囚ゴスリングは、実は無実の罪を着せられて死んだのだ。首つり判事の異名をとる峻厳な判事ブリテンのために!
その数年後、ノーフォーク州最北端の寒村モクストンにティールと名乗る浮浪者風の男が現われた。村の一番奥のコテージに住むジョン・ウィロビーを訪ねてきたのだった。ウィロビーは、一年半程前から、時々村に来ては何日か泊っていくようになった男で、まともな紳士然とした人物だが、彼が何者なのか、どこに住んでいるのかは、誰も知らなかった。一方ティールは、村に来て二日目の夕方、ウィロビーの家へ行くと言って宿を出たが、それきり行方不明になってしまった。やがてウィロビーも村を去り、何の手掛りもないまま三週間が過ぎた頃、ウィロビーの家の回りに異臭が漂いはじめ、庭の古井戸からティールの死体が発見された。警察はさっそく、ウィロビーの身許を調べはじめたが……。
無実の死刑囚の死とノーフォークの寂しい寒村に起きた奇怪な事件のあいだに、一体どんなつながりが? イギリス文壇に特異の存在を示すハミルトンの、現代法制と社会の歪みを鋭く突いた、異色の傑作。 |